IVDD製品期限延長とEUDAMED段階利用の改正提案

2024年1月23日に欧州委員会 保健衛生・食品の安全総局(DG SANTE)から提案されたMDR/IVDRの改正法案は、2024年2月14日に実施されたEU理事会で修正無しに承認されました。早ければ2024年7月のEU本議会で可決承認され、2024年8月以降の官報(オフィシャルジャーナル)掲載で法改正となる見込みです。改正法案の要約は以下3点です。

1.EUDAMED 使用開始ルールの変更

  • 現状:EUDAMEDは6モジュール全て稼働後に監査→官報告示→6ヶ月(一部は24ヶ月)の移行期間を経て義務化
  • 改正案:稼働モジュール個別検証を行い、MDCGと欧州委員会が協議した上で6ヶ月後の義務化

→(臨床検査&パフォーマンス研究モジュール:CI&PS以外の)先行する5つのモジュールは、2024年7月から監査を行うことが決まれば、現行発表(UDI/認証モジュールは2029年第2四半期)の予定は、大幅に前倒しとなり、UDI登録の義務化が始まります。またVigilance(市販後調査)モジュールのPSUR報告には、UDIデバイス登録が必須で、特に高リスククラス(Class III/D、Class IIb/C)製品は、NBの確認作業によりEUDAMED上で「登録」ステータスとなります。2024年4月現在、NB側の確認作業がスムーズに実施されていない状況の中、確認作業期間も考慮した上でUDI登録を進めて行くことが医療機器メーカー側に求められます。

2.高リスク製品供給停止の通知義務

全ての医療機器、体外診断用医療機器とも、高リスク製品の供給が一時的または恒久的に中段する場合に、製造事業者は、規制当局や医療機関に事前通知することを第10a条として、MDR(Reg(EU) 2017/745) / IVDR(Reg(EU) 2017/746)にそれぞれ追加する案

3.IVDD製品の認証期限延長

「IVDD自己宣言品の中で、IVDR認証が必要な機器」について、2022年1月の改正によりリスククラスに応じて最長2027年5月26日まで延長されましたが、「IVDD認証品かつIVDR認証が必要な機器」は対象外となっていました。今回の改正案では、

(1)IVDD認証品かつIVDR認証が必要な機器は、下記条件で2027年12月31日まで移行処置期限を設ける

  • 2022年5月26日時点で、有効なIVDD認証書があり、現時点で撤回されていないこと
  • 2025年5月26日までに、製造業者がIVDRに基づくQMSを導入していること
  • 2025年5月26日までに、NBにIVDR適合性評価申請を実施していること

一定の条件を満たしていれば、IVDDの認証期限が切れていた製品も2027年12月31日まで有効となる場合があります。

(2)IVDD自己宣言品の中で、IVDR認証が必要な機器の延長期限案は、

  • Class D: 202712月31日 (従来期限:20255月26日)
  • Class C: 202812月31日 (従来期限:20265月26日)
  • Class B 及び Class A滅菌: 202912月31日(従来期限:20275月26日)

となります。適用条件は、

  • 2025年5月26日までに、製造業者がIVDRに基づくQMSを導入していること
  • 分類ごとに定められた日(Class D:2025年5月26日、Class C:2026年5月26日、Class BとA滅菌:2027年5月26日)までに、NBにIVDRの適合性評価申請を実施していること
  • 分類ごとに定められた日(Class D:2025年9月26日、Class C:2026年9月26日、Class BとA滅菌:2027年9月26日)までに、製造事業者とNBがIVDRの切替申請手続きの契約を書面で締結していること

以上3点の法改正となる予定です。

◆Vigilanceモジュールに関する投稿はこちらからどうぞ◆

Vigilance(市販後調査)モジュール・・・ VigilanceモジュールとPSUR対象リスククラス

Vigilance(市販後調査)モジュール(2)・・・ PlaygroundサイトでのVigilanceモジュール

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情報機構様EUDAMEDオンラインセミナー・・・EUDAMED最新状況と、UDI登録の注意点等の詳細を解説

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レガシーデバイスの認証有効期間延長について(3)

レガシーデバイスの認証期限については、2023年2月16日の欧州議会で可決されましたが、その後、3月20日付でEU官報(オフィシャル・ジャーナル)に掲載されましたので、正式に法改正されました。L80 P24-29 に記載されています。

またECの公式サイトに、今回の改正内容の詳細を記載した冊子が発行されました。

EXTENSION OF THE MDR TRANSITIONAL PERIOD AND REMOVAL OF THE ‘SELL OFF’ PERIODS

今回の法改正で、レガシーデバイスは条件によって、Class III、 IIb(インプラント) は、2027年12月31日、Class IIb(インプラント以外)、IIa、 I は2028年12月31日まで、認証期限が延長されました。MDRへ切替予定で既にNBへ認証取得申請中のデバイスは、原則すべて延長対象となります。

尚、EUDAMED UDIモジュールの登録期限(予定)とされる2026年4-6月期以降も、レガシーデバイスの認証期限が有効となることから、対象となるレガシーデバイスは、EUDAMED UDI登録が必須となります。

◆レガシーデバイス認証有効期間延長に関する投稿はこちらからどうぞ◆

レガシーデバイスの認証有効期間延長・・・ 期限延長の背景、議会への提案事項

レガシーデバイスの認証有効期間延長(2)・・・ EU議会で可決により正式決定

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レガシーデバイスの認証有効期間延長について

欧州域内で既に流通している医療機器の中で、2024年5月26日までにMDD/AIMDDの認証期限を迎える製品は、22,793あると言われていますが、期間的な問題や、NB(ノーティファイボディ)の物理的な数の制約などにより、同期間でMDR認証を受けられる製品は7,000程度と見込まれています。2022年6月に、Employment, Social Policy, Health and Consumer Affairs (EPSCO:雇用、社会政策、健康、消費者問題)評議会で、この問題の指摘を受け、Medical Device Coordination Group (MDCG:医療機器グループ)は、2022年8月26日にMDCG 2022-14 というポジションペーパーを発刊し、NBの能力向上や製造業者の準備強化のための「19の取り組み」を文書化しました。

ポジション ペーパーMDCG 2022-14 は全面的に支持されていますが、追加措置として、緊急で的を絞った立法化が複数の加盟国、利害関係者などから求められている状況の中、2022 年 12 月 9 日に欧州委員会は EPSCO 理事会に解決策の提案を行いました。提案内容は以下のものが含まれます。

  • 高リスクのデバイス (Class III、 Class IIb(インプラント)) は、2027年まで移行期間を延長
  • 低リスクのデバイス (Class IIb(インプラント以外)、IIa、 Class I(一部)) は、2028年まで移行期間を延長
  • 2025年5月の「販売期限条項」の廃止

移行期間の延長は、MDD/AIMDDに基づいて発行された証明書の有効期間の延長と組み合わせること意味しています。適用条件は、

  • 健康と安全に許容できないリスクを持っていない
  • 設計または意図された目的に重大な変更が加えられていない
  • 製造業者が認証プロセスを開始するために必要な手順をすでに実行している

等となっています。製造業者は、MDR への品質管理システムの適応、および特定の期限 (例: 2024 年 5 月 26 日) までに、NBによる適合性評価のための申請書の提出、またはNB側の受理などが含まれます。

では、EUDAMEDとの関連については、どのように考えるべきでしょうか?

今回の期限延長は、レガシーデバイスに限られます。また、EUDAMEDのリリーススケジュールや、MDR/IVDR認証製品の登録期限には、一切影響を与えません。さらに、2024年5月で認証期限が切れるレガシーデバイスについては、UDI登録義務化(2026年第2四半期)より前に有効性を失うため、EUDAMEDへのUDI登録が必要ないとの判断も可能でしたが、2027年まで延長されたことで、MDRへの切替有無にかかわらず、レガシーデバイスのUDI登録が必要になることを意味します。

atrify社のニュース記事にも本件に関する記載があります(英語)。

◆レガシーデバイス認証有効期間延長に関する投稿はこちらからどうぞ◆

レガシーデバイスの認証有効期間延長(2)・・・ EU議会で可決により正式決定

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レガシーデバイスの認証有効期間延長について(2)

2023年1月に欧州委員会によって採択された、医療機器のMDR認証への準拠期限を延長する提案について、2023年2月16日の欧州議会で可決され、認証期限の延長が正式に決定しました。

2023年2月16日の欧州議会投票結果(537対3で可決)

2023年1月6日に発表されたプレスリリース(英語)はこちらから確認できます。

同1月6日付の提案文書はこちらのから確認できます。

同1月19日に締切られた公式サイトには、多くのフィードバックコメントが掲載されています。詳細はこちらから確認できます。

ノーティファイボディ(NB)に、MDRへの変更手続きを実施しているMDD/AIMDDのレガシーデバイス製品は、EU官報に公開された日以降、2028年(Class I(一部), IIa, IIb(インプラント以外))、または2027年(Class IIb(インプラント), III)の12月31日までレガシーデバイスとして認証期間が延長されます。延長された製品は、全てEUDAMEDへのUDI登録対象となりますので、該当製品がある医療機器メーカー様は、早めの登録準備をお薦めします。

◆レガシーデバイス認証有効期間延長に関する投稿はこちらからどうぞ◆

レガシーデバイスの認証有効期間延長・・・ 期限延長の背景、議会への提案事項

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Basic UDI-DI(6)・・レガシーデバイスにおけるBasic UDI-DI

従来のCEマークを取得済みの医療機器は、EUDAMEDではLegacy Device(レガシーデバイス)と定義され、

  • AIMDD(Active Implantable Medical Devices Directive(能動植込医療機器指令): 90/385/EEC)
  • MDD(Medical Devices Directive(医療機器指令): 93/42/EEC)
  • IVDD(In-Vitro Diagnostic Medical Devices(体外診断薬指令): 98/79/EC)

に該当するデバイスを指します。2021年5月のMDR、2022年5月のIVDRが開始された以降も市場で流通するレガシーデバイスについてはEUDAMEDへの登録が求められています。EUDAMEDにレガシーデバイスを登録する際には、「Basic UDI-DI(FLD-UDID-14)」コードに相当する部分は、「EUDAMED DI(FLD-UDID-42)」コードとなり、項目番号、名称とも異なるコードを使用します。

また、MDR/IVDR製品では、「Basic UDI-DI(FLD-UDID-14)」には、登録側の医療機器メーカーが、発行元機関「Issuing Entiry(FLD-UDID-01)」をGS1、HIBCCなどに決定し、各機関のルールに沿って独自で採番しますが、レガシーデバイスの「EUDAMED DI(FLD-UDID-42)」は、コード発行元機関「Issuing Entity for EUDAMED DI(FLD-UDID-295)」を「EUDAMED」とし、「EUDAMED DI(FLD-UDID-42)」には、「B-(UDI-DIコード)」の形で登録する仕様となっています。UDI-DIを持っていない機器については、まず、EUDAMED DIを「B-(21桁までの「SRN番号+製品コード」+チェックキャラクタ2桁)」で作成し、頭の「B-」を「D-」に置き換えることで「EUDAMED ID(FLD-UDID-342)」としてコードを作成します。その場合はFLD-UDID-341のコード発行元機関を「EUDAMED」とします。

今後、GTIN、HIBCCコード等のUDI-DIが存在しないレガシー製品が、どの程度市場で流通し続けるものなのか不明ですが、そのような製品であってもEUDAMEDには登録できるようになっています。レガシーデバイスのコード設定についての詳細は、ECのサイトに「Management of Legacy Devices MDR EUDAMED Date: 15 .02.2021 Doc. Version: 1.2」文書があります。

MDR/IVDR とレガシーデバイスでの「Basic UDI-DI」、「EUDAMED DI」、「UDI-DI」、「EUDAMED ID」の違い

 

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Basic UDI-DI(1) ・・・ Basic UDI-DIとは、どんなコードなのか

Basic UDI-DI(2) ・・・ Basic UDI-DIの発行元機関(Issuing Entity)について

Basic UDI-DI(3) ・・・ 発行元機関をGS1とした場合のBasic UDI-DIの例

Basic UDI-DI(4) ・・・ Basic UDI-DIに関連した項目と設定値の定義について

Basic UDI-DI(5) ・・・ Certificate(認証)関連データ項目の登録有無について

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レガシーデバイスの登録(1)・・登録ルール

レガシーデバイス(MDD/AIMDD/IVDD製品)は、2024年5月26日までが有効期限となっている(IVDD製品はそれ以降も可のケースもあります)ため、それ以降もEU市場にて引き続き販売(流通)する製品については、有効期限内にMDR/IVDR認証取得が必要となります。MDR/IVDR認証を受ける際に、UDI-DI(例:GTIN)を継続して使用する場合も多いと思われます。そうした場合には、EUDAMEDへどのようにUDI登録するべきでしょうか?

EUDAMEDへのUDI登録の中で、レガシーデバイスについては以下ルールが設けられています。

  1. レガシーデバイスは、Primary DI(認証を受けている単品)のみ登録します(製品階層の定義はできません)
  2. レガシーデバイスとして登録する際には、「Basic UDI-DI(FLD-UDID-14)」に代わる「EUDAMED DI(FLD-UDID-42)」が必要となり、Primary DIと1対1に紐づけたIDを登録します(MDR製品の「Basic UDI-DI」は複数の「UDI-DI」を紐づけることができますが、「EUDAMED DI」は複数の「UDI-DI」を紐づけできません。あくまで1対1の組み合わせのみ有効です)
  3. UDI-DI」に相当するコードがない製品の場合は、「EUDAMED ID」としてPrimary DIを定義し登録します。

Basic UDI-DI(6)・・レガシーデバイスにおけるBasic UDI-DI」 も併せてご確認ください。

レガシーデバイスの登録イメージ

レガシーデバイスをお持ちの場合は、まずは上記のような方法でEUDAMEDへUDI登録を完了していただくことをお薦めします。登録は、欧州委員会のポータルサイトからも、atrify UDI Solution等の3rdパーティー・ソリューションを利用するなどの方法でも登録できます。また、Primary DIとして登録されたデバイスの内容は、今後、MDR/IVDRの認証を受けた際に、そのままデータ内容を引き継いでMDR/IVDR製品として登録できるようになっています。

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レガシーデバイスの登録(2) ・・・ MDR/IVDR引継登録

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レガシーデバイスの登録(2)・・MDR/IVDR引継登録

(2)では、レガシーデバイスとして登録した製品が、MDR/IVDRの認証を受けた時の登録方法です。

  1. MDR製品は、Primary DIの上位概念として「Basic UDI-DI」を登録します。「Basic UDI-DI」には、Certification(認証関連)、Clinical Investigation(臨床試験)に関する情報が必要となりますので、これらの情報を登録します。「Basic UDI-DI(4)・・Basic UDI-DIに関連した項目と設定値の定義について」を併せてご確認ください。
  2. すでにMDD製品としてPrimary DI(「UDI-DI」)が登録されていますが、同様の内容をMDR/IVDR製品として再度入力し、1.の「Basic UDI-DI」と紐づけます。atrify UDI Solutionのエクセルアップロード機能では、レガシー品で登録した際のデータ項目をコピー&ペースト(一部の項目は、書換が必要)で設定できるため、作業時間が大幅に削減できます。
  3. Basic UDI-DI」は、仕様、用途などが同一の複数デバイス(Primary DI、 Package DI)については、ひとつの「Basic UDI-DI」に紐づけます。
  4. パック/ケース/コンテナ等の物流、販売形態と製品を階層構造で定義します(階層定義は任意です)

以上の4段階の登録を実施することで、MDR製品(IVDR製品も同等)は、以下のようなイメージで登録され、レガシー製品から自動的に引き継がれます。

MDR製品のUDI登録イメージ

またMDR/IVDRとして登録できた後は、レガシー製品として登録されている製品の一部を修正することをお薦めします。レガシー側製品は、切替わった時点で出荷停止となるはずのため、レガシー側のUDI-DIにある

  • Device Status(FLD-UDID-130)」は、「NO_LONGER_PLACED_ON_THE_MARKET」に
  • さらに、Market Info欄の出荷対象国の「End Date(FLD-UDID-251)」にも販売終了日

をそれぞれ個別に変更する必要があります。これらの2項目については、MDDからMDRに変更しても自動的に修正される仕様ではありませんのでご注意ください。

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レガシーデバイスの登録(1) ・・・ 登録ルール

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